学園祭の出し物の準備で連日忙しく、朝は開門と同時くらいに登校し、夕方は最終下校時刻ギリギリまで残っている。僕は副部長だが、部長が他校との共同プロジェクトにかかりっきりなので、校内での部活の責任者は実質僕だ。いつもは部長が管理してる部室の鍵も僕が今は管理していて、僕が行かないと部室の鍵はあかないし、下校時にはしっかり僕が部室の鍵をかけないと、誰かに入り込まれてふざけて準備している展示品などを壊されたら大変だ。
今日もいつものように最終下校時刻ギリギリまで部室に残っていて、顧問の小野先生にいい加減帰れと怒られたので、急いで片づけて部室を後にした。外はすっかり暗くなっていて、秋が深まっているのを感じる。校舎の裏にまわり自転車置き場に行くと、残っているのは僕の自転車の他、あと数台のみ。同じように残っている自転車の持ち主は、きっと文化祭の準備に追われている他の部の部長たちだ。
自分の自転車に近づくと、すぐに朝と違う状態に気が付いた。なんだろう。フレームだ。なんと僕の自転車のフレームの部分に、見覚えのないU字ロックがかかっているのだ。なぜだろう。誰の鍵なのだろう。しっかりロックされているので、鍵がなければ外すことはできなそうだ。僕の自転車のフレームにつけても、どこに固定されているわけでもなく、フレームの上の方、ハンドルポスト側に寄せて走れば、自転車の走行には支障はない。でもフレーム部にU字ロックがついたままの自転車なんて、自転車泥棒かなにかと間違われないだろうか。
そこでふっと、彼女の顔が浮かんだ。去年同じクラスで今年は別クラスの、テニス部の彼女とは、文化祭準備が忙しくなって、夏休み明け以降、ほとんど会えていない。夜も疲れていて、電話やラインも3日くらいしていなかった。自転車置き場から試しに彼女にラインをしてみると、すぐに既読になり、アカンベーをしたキャラクターのスタンプが届いた。